iDeCoを始めた年のふるさと納税の上限

なぜ上限が下がる向きに動くのか

iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除になり、税の計算の元になる所得が掛金の分だけ減るからです。

国税庁は、対象に「個人型年金加入者掛金」(iDeCoの掛金)を含め、控除できる金額は「その年に支払った掛金の全額」としています。住民税でも同じ名前の所得控除です。大阪市は、iDeCoの掛金を含めて「支払った掛金の全額」が控除されると案内しています。

ふるさと納税の上限は、住民税の所得割額の20%を元に決まります(式の全体は上限額の計算式で説明しています)。掛金で所得割額が減ると、その20%も小さくなります。

何が起きるか上限への向き
iDeCoの掛金が所得から引かれる課税される所得が減る
住民税の所得割額が減る上限の元の数字が小さくなる
所得割額の20%が小さくなる上限は下がる向き

iDeCoもふるさと納税も、税金を軽くする仕組みです。iDeCoを始めると、ふるさと納税の上限の計算が変わります。

どのくらい動くのか(計算の例)

調整控除などを省いた単純な例です。あなたの上限額ではなく、仕組みを見るための数字です。

住民税の所得割の税率は、市民税6%と県民税4%で合わせて10%です(岐阜県土岐市の案内)。年間の掛金が24万円(月2万円)なら、所得割はおよそ2万4,000円減ります。その20%の4,800円が、上限の元から減る分です。

これを寄附額に直すには、上限の式の割り算(90%から所得税率に1.021をかけた数を引いた数)で割ります。割る数は所得税率で変わります。

所得税率割る数上限が下がる額の目安
10%0.9 − 0.1021 = 0.79794,800円 ÷ 0.7979 = 約6,000円
20%0.9 − 0.2042 = 0.69584,800円 ÷ 0.6958 = 約6,900円

年24万円の掛金で、上限が数千円下がる向きに動く、という大きさです。実際の下がり幅は、課税所得、調整控除、ほかの控除で変わります。

始めた年にずれる理由

寄附をする時点では、その年の所得も所得控除もまだ確定していません。土岐市も「寄附する時点では、その年の所得や所得控除が確定していないため、正確な上限額を算出することはできません」と案内しています。

そのため、目安は前の年の数字で出すことが多く、iDeCoを始めた年はここでずれます。

使う数字iDeCoの掛金が入っているか
昨年の源泉徴収票始める前の年なら入っていない
今年度の住民税の通知書昨年の所得で計算されるので、始める前の年なら入っていない
今年分の源泉徴収票(年末〜1月)今年に支払った掛金が入っている

iDeCoを始める前の年の数字で目安を出して、その額いっぱいまで寄附すると、始めた年は上限をこえるおそれがあります。こえた分は、自己負担が2,000円より増えます。

始めた年は、掛金を払った月だけが控除に入ります。たとえば年の途中から月2万円を始めたなら、その年の控除は「支払った月数×2万円」です。年24万円の例より小さくなります。

上限をこえたときの扱いは上限をこえて寄附したとき、余裕の持たせ方は上限より少なめにする考え方で説明しています。

どの書類のどの欄を見るか

掛金の年額は、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」の欄で確かめます。

国税庁の確定申告書等作成コーナーの案内では、小規模企業共済等掛金(iDeCoなど)がある場合、この欄は二段書きになり、上段(内書き)が小規模企業共済等掛金の額です。

書類見る欄わかること
源泉徴収票「社会保険料等の金額」の上段(内)iDeCoなどの掛金の年額
iDeCoの払込証明書その年の払込額年末調整や確定申告に出す書類
住民税の通知書所得割額前の年の所得で計算された額

年末調整や確定申告で控除を受けるには、支払った掛金の証明書を、申告書に添付するか提示します(国税庁 タックスアンサー No.1135)。年末調整で証明書を出し忘れると、その掛金は年末調整の控除に入らず、控除を受けるには確定申告が必要になります。確定申告をすると、ワンストップ特例の申請は使えなくなり、ふるさと納税も確定申告で申告します。

目安は各ポータルのシミュレーションで出せますが、最後は源泉徴収票と住民税の通知書の数字で確かめてください。

よくある質問

iDeCoを始めたら、ふるさと納税は損になりますか。

変わるのは上限の数字です。上限の範囲内で寄附し、控除の手続きをすれば、自己負担は2,000円です。上限が下がるのは、iDeCoで税金が先に軽くなっているためです。

iDeCoを始めたら、ワンストップ特例は使えなくなりますか。

使えます。iDeCoの控除は年末調整でも受けられるので、確定申告が必要になるとは限りません。ワンストップ特例を使えるかどうかは、判定の道具で確かめられます。

会社の企業型確定拠出年金の掛金も同じですか。

国税庁の対象には「企業型年金加入者掛金」(加入者本人が出す掛金)も入っています。ただし、給与から天引きされるなど扱いは会社ごとに違うので、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」で確かめてください。

自分がワンストップ特例と確定申告のどちらになるかは、判定の道具で確かめられます。

ワンストップか確定申告か判定する

確認日:2026年11月5日。出典:国税庁 タックスアンサー No.1135「小規模企業共済等掛金控除」、国税庁 確定申告書等作成コーナー「社会保険料等の金額欄の『内』とは何ですか?」、大阪市「所得控除額の計算」、土岐市「寄附金控除の上限額の計算」、総務省「税金の控除について」。この記事は一般的な制度の説明で、個別の税額や申告のしかたの判断ではありません。ご自分の場合は、税務署やお住まいの市区町村に確かめてください。最新の情報は公式のページで確かめてください。